2013年3月4日月曜日

構造物発明における用途限定の侵害訴訟における解釈


大阪地裁平成25年2月19日判決

平成23年(ワ)第13469号 特許権侵害差止等請求事件

 

1.概要

 本事例はペット用サークルという構造物に関する特許権の侵害訴訟の第一審判決である。

 本件特許では、「収容したペットのトイレの仕付けを行うペット用サークル」、「住居スペース」、「トイレスペース」という用途の限定を伴う構成により発明が特定されている。

 被告製品が技術的範囲に含まれるか否かの解釈において、これらの用途限定の意義が争われた。被告は、被告製品はこれらの用途に用いられることは必須ではなく他の用途にも使用できるのであるから技術的範囲に属さないと主張した。これに対し裁判所は本件特許での用途限定は、「使用することが可能な構成であることを意味する」と解釈し、所定の用途に使用することが可能な被告製品は本件特許の技術的範囲に属すると判断した。

 

2.本件特許(原告特許権の請求項1を分説したもの。下線部は強調のために付加)

複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で,収容したペットのトイレの仕付けを行うペット用サークルにおいて,

前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイレスペースに区画されており,

前記中仕切体には,ペットが出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに,

この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ,この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペースとの間をペットが行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていることを特徴とする

ペットのトイレ仕付け用サークル

 

3.裁判所の判断のポイント

(2) 構成要件充足性

被告物件の仕切りパネル(b1,b2),ペット(犬)が出入り可能な出入口(c1,c2),扉(d1,d2)は,それぞれ本件発明の「中仕切体」,「仕切出入口」,「仕切扉」に該当し,被告物件はいずれも本件発明の構成要件を充足する。

被告は,被告物件は,「収容したペット(犬)のトイレの仕付けを行う」ことが可能な構造ではあるが,これを必須とするものではなく,また,仕切りパネルによって二つの空間に仕切られるものであるが,仕切られた各空間の使用方法はユーザーの任意であり,「住居スペース」と「トイレスペース」に区画されることを必須とするものではないとして,構成要件A,B,D,Eを充足しないと主張する。

 しかしながら,本件発明において,「収容したペットのトイレの仕付けを行う」,「住居スペースとトイレスペースに区画」とされているのは,本件発明のペット用サークルの用途に関するものであるところ,本件発明は,既知の構成に新規の用途を見出したことを特徴とする発明ではなく,ペット用サークルの構成自体を特徴とする発明と解されるから,上記各文言は,当該ペット用サークルについて,トイレの仕付けのために住居スペースとトイレスペースとに分けて使用することが可能な構成であることを意味するにすぎず,当該用途に使用されることが必須であるとは解されない。

 そして,被告物件1は「トレーニングサークル」という名称で,「幼犬のトイレのしつけに」と宣伝されており,被告物件2も「トイレのトレーニングにも!」と宣伝されているのであるから,被告物件が,いずれも上記各文言を充足することは明らかである。

・・・

(3) 小括

 したがって,被告物件は本件発明の技術的範囲に属すると認められる。」