2013年12月3日火曜日

請求項中の符号は発明を限定しないと判断された事例


東京地裁平成25年10月31日判決

平成24年(ワ)第3817号 特許権侵害行為差止請求事件

 

1.概要

 本件は、特許権侵害訴訟の第一審判決である。

 東京地裁は被告製品が原告特許権を侵害すると判断し、原告による差止請求等を認めた。

 原告特許権の請求項1では「金属粉収集機構(12H,16,19A,19B)」という構成が記載されている。

 東京地裁は、金属粉収集機構は符号12H,16,19A,19Bで示される実施形態には限定されず、明細書に記載されている他の実施形態も含むと解釈し、被告製品が「金属粉収集機構(12H,16,19A,19B)」を充足すると判断した。

 

2.裁判所の判断のポイント

特許請求の範囲の括弧内に符号を記載することに関しては,特許法施行規則24条の4及び様式29の2の〔備考〕14のロに「請求項の記載の内容を理解するために必要があるときは,当該願書に添付した図面において使用した符号を括弧をして用いる。」と規定されているところであり,これによれば,特許請求の範囲中に括弧をして符号が用いられた場合には,特段の事情のない限り,記載内容を理解するための補助的機能を有するにとどまり,符号によって特許請求の範囲に記載された内容を限定する機能は有しないものと解される。

 この点に関し,被告は,本件出願人は,本件補正書に係る補正によってこれらの符号により特定される実施形態以外の構成を意識的に除外したから,「金属粉収集機構(12H,16,19A,19B)」は,これらの実施形態の構成に限られ,蛇腹状のカバーの内面の凹部は構成要件Eにいう「金属粉収集機構」に当たらない旨主張する。

 しかし,これらの符号は本件補正書に係る補正の前から明細書及び図- 22 - 面中で使用されていたものであり(乙1),前記(1)イ記載の本件特許の出願経過に照らし,本件出願人が拒絶理由の回避のために特定の構成を除外する意図でこれらの符号を付したとは認め難い。そうすると,本件において上記特段の事情があると認めることはできないから,符号「(12H,16,19A,19B)」の記載は,特許請求の範囲に記載された内容をこれらの符号により特定される実施形態の構成に限定するものではないと解すべきである。」