2013年2月4日月曜日

間接侵害成立が認められた事例

大阪地裁 平成25年1月17日判決
平成23年()第4836号 特許権侵害差止等請求事件

1.概要
 本事例は特許権侵害訴訟において間接侵害が成立すると判断された事例である。
 被告が製造販売する(業として実施する)各製品は「二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット」である。
 被告製品(キット)を購入した需要者は、被告製品のキットから最終産物である「二酸化炭素含有粘性組成物」を調製して使用する。需要者の行為は「業として」の行為ではない。
 原告が有する特許権の本件特許発明1は「二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット」である。裁判所は被告製品が本件特許発明1の直接侵害に該当すると判断した。
 原告が有する特許権の本件特許発明7は「請求項1~5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む部分肥満改善用化粧料。」である。
 本事例において裁判所は、被告による被告製品(キット)の製造販売は、本件特許発明7の間接侵害行為に当たると判断した。

 特許法101条1号及び2号に規定されている間接侵害行為は次の通り
一 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
二 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

 条文の文言から明らかな通り、間接侵害品(キット)の業としての実施行為が間接侵害に該当するとされているだけであり、間接侵害品(キット)を用いて、物クレームに係る最終製品を生産する行為が「業として」行われることは要求されていない。

2.本件発明
本件特許発明1(請求項1)
「部分肥満改善用化粧料,或いは水虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって,
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせ;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒,粉末)剤と,アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ
からなり,
含水粘性組成物が,二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする,
含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。」

本件特許発明7(請求項7)
「請求項1~5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む部分肥満改善用化粧料。」

3.裁判所の判断のポイント
被告各製品は,ジェル剤と顆粒剤のキットからなる化粧料であり,本件特許発明1の各構成要件を充足するが,被告各製品を購入した需要者は,上記2剤を混ぜ合わせて,自らジェル状の「部分肥満改善用化粧料」を調製し,生成することが予定されており,それ以外の用途は考えられない。
 したがって,被告各製品を製造,販売する行為は,本件特許発明7に係る特許権の間接侵害に当たるといえる。