2009年5月8日金曜日

独立特許要件欠如による補正却下の理由は通知されない

1. 事件の概要
知財高裁平成19年10月31日判決
平成19年(行ケ)10056号
拒絶審決取消
訴訟
主文:原告の請求を棄却する
 原告は,平成18年2月20日,発明の名称を「切り取り線付き薬袋」とする発明について特許出願(特願2006-41777号)したが,同年8月1日付け(発送日)で拒絶査定を受けたので,同月24日,拒絶査定不服審判を請求し,同日付けで特許請求の範囲等について手続補正(前置補正)をした。この補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する「限定的減縮」を目的とする補正であった。
 特許庁は,これを不服2006-18490号事件として審理し,平成18年12月18日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,平成19年1月15日,原告に送達された。

 審決は,本願補正発明(前置補正後の請求項1に係る発明)は特許法29条1項柱書の「発明」に該当にしないことなどを理由として,特許出願の際,独立して特許を受けることができないとして,本件補正を却下した上,本願発明は,引用発明及び周知の事実等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。

 本願補正発明が人為的取り決めに該当し「発明」に該当しないことは、前置補正により導入されたわけではない。特許法第29条第1項柱書違反の問題は、出願時の請求項に係る発明において潜在的に存在していた。このような場合にも、審判請求人(出願人)に補正却下の理由を通知する必要がないかが争点。

 2011年10月10日記事(知財高裁平成23年10月4日判決 平成22年(行ケ)第10298号 審決取消請求事件)も要チェック

2. 裁判所の判断の
ポイント
「(1)審決は,「本願補正発明は,特許法第29条第1項柱書に規定する『発明』に該当しないので,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。・・・(略)・・・したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。」(7頁第4段落~第6段落)としたのに対し,原告は,本願補正発明が,発明に該当しないとの拒絶理由は,平成18年4月4日付け(発送日)の拒絶理由通知(甲6)及び同年8月1日付け(発送日)の拒絶査定(甲7)において,全く示されておらず,審決において,本願補正発明が特許法29条1項柱書の発明に該当しないとする判断をするに当たっては,原告に拒絶理由を通知し,相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えなければならなかったのに,そのような通知がされなかったから,審決は,特許法159条2項において準用する同法50条に違反してされたものであるとして,審決が,本件補正を却下したことを誤りである旨主張する。
(2)審決は,審判請求時にされた本件補正について,特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきであるとするところ,本件補正について,これらの条文を適用することに誤りはないし,かつ,補正を却下するに当たり,却下の理由を事前に通知することが必要であるとの規定はないのであるから,審決に原告主張の違法な点はない。
 原告は,審決が,特許法159条2項において準用する同法50条に違反する旨主張するのであるが,同法159条2項において,同法50条は,「第50条ただし書中『第17条の2第1項第3号に掲げる場合』とあるのは,『第17条の2第1項第3号又は第4号に掲げる場合』」と読み替えて準用され,同法50条は,「審査官は,拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし,第17条の2第1項第3号に掲げる場合において,第53条第1項の規定による却下の決定をするときは,この限りでない。」とされ,補正の却下について意見書を提出する機会は与えなくていいとされているのであるから,本件補正の却下に当たり,補正の却下の理由を事前に通知する必要がないことは明らかであり,原告の主張は採用できない。」

さらに,原告は,発明に該当しないという拒絶理由は,本件補正により生じた拒絶理由ではなく,本件補正の前から既に存在していたが見落とされていた拒絶理由であるから,本件補正について,特許法17条の2第5項が適用されるべきではない旨主張する。しかし,補正の却下を定めた上記規定において,原告主張を裏付けるといえる規定はなく,原告の見解は独自のものである。原告は,審判請求時に本件補正を行わなかった場合,特許法159条2項が準用する同法50条による拒絶理由通知を発することなく,いきなり不意打ち的に「発明該当性の欠如」を理由として拒絶審決を行うことが許されないこととのバランスなどもいう。しかし,上記各規定に照らしても,出願についての拒絶の査定を維持する審決とその手続における補正の却下において,出願人に対する事前の理由の通知(拒絶の査定を維持する審決においては,査定と異なる拒絶の理由の通知)の必要性については,取扱いが異なるのであり,また,出願そのものと補正との違いからも,補正を却下する場合に事前にその理由の通知をしなければ不合理であるとは必ずしも認められず,原告の主張は採用できない。」

3. ブログ管理人コメント
 似た判決は多数あり、特段風変わりな判決ではありません。
 前置報告書に、独立特許要件違反+補正却下の旨が記載されていたら、上申書を提出し「更に補正すれば独立特許要件違反も理由も解消できる」ということをアピールして、補正の機会を与えてもらうことを狙うことになります。それでも、補正の機会が与えられるかどうかは審判官の裁量です。

 平成19年4月1日以降の出願は、拒絶査定後でも分割出願ができるようになりましたが、拒絶審決後には依然として分割出願はできません。拒絶査定不服審判請求時の補正と分割は十分慎重に検討したうえでおこなうべきでしょう。